ラブ×3



「あんのへなちょこっ何処行ったー?!」
 午後一番の日差しが降り注ぐ血盟城。
 その中央階段で響いた声に、誰もが微苦笑を禁じえなかった。
 そう、これはいつもの日常。
 この国が、民が平和だという証。
 それは王である彼の主が素晴らしく、お心が広いから。
 何より民を想う気持ちは歴代トップであるだろうし、そして彼の人の笑顔は太陽のように国中を明るく照らしてくれる。
 その、主はといえば――。






「ったくもー、何処まで追っかけて来るんだよヴォルフの奴っ」
 愚痴を零しつつ、第27代魔王であるユーリは中央階段から西へ只今逃走中。
 隠れられる場所はないかと辺りをきょろりと一周する。
 ・・・と、突然何処からともなく伸びてきた腕に腰を掴まれ、強く引かれた。
「う、わっ、誰、っ?」
 そう言いつつも、その腕が誰のものなのかなんて見なくとも解る。
 廊下の片隅にあった空き部屋に連れ込まれ、薄暗闇の中背後からぎゅっと抱きしめられた。
「今日も相変わらず元気が良いですね」
「それはおれにじゃなくてヴォルフに言ってくれる?」
「あなたも十分元気でしょう?ヴォルフと追いかけっこしてるんですから。」
「追いかけっこって・・・あんたなぁ」
 子ども扱いするなと暗に発しつつ背後を見遣る。
 そこにいた名付け親であり護衛、そして野球仲間でありながら一番の理解者である恋人は楽しそうに目元を弛めていた。
 くいっと耳を引っ張ると「痛いですよ」とさして痛くもなさそうな非難の声が降る。
「そもそも、コンラッドがいないから仕事終って休憩に入った途端ヴォルフに掴まる羽目になったんだろうが」
「すみません、陛・・・っと、ユーリ。」
 言うなよと睨まれ、コンラッドは苦笑を浮かべて訂正した。
 それから腰に回していた腕に力を込めて、空気さえ邪魔させないというように体を密着させてくる。
「ちょ、あの、コンラッドさん?」
「うん、どうかした?」
「その、どうしてそんなに密着してくるのかなー何て・・・」
 どうにか体を離そうと試みるが、如何せん力の差は歴然としている。
 びくともしない腕にうぐぅ・・・と呻りを上げ、もう一度訴えようと背後に首を巡らせたとき。
「・・・んっ」
 触れ合うだけかと思ったキスは、そろりと押し当てられた暖かい物に違うと否定する。
 薄く唇を開けば待っていたかのようにするりと侵入し、慣れない刺激に奥で縮こまっているユーリの舌を優しく撫でた。
 それから歯列をなぞり咥内の肉を押したりしてユーリの感じるポイントを探っていく。
「ふ・・・んんっ」
 ちゅくりと濡れた音が鼓膜を刺激し、羞恥心に鼓動が跳ね上がった。
 自分のものとは思えない甘い啼き声に瞼に力を入れ、ともすれば与えられる快感に酔いしれる。
「は、んくっ、や・・・っ」
「声、殺さなくても大丈夫。ここは誰もこないから」
 言うや否や、手近にあったソファーにユーリの体を寝かせ服の前を肌蹴させていく。
 白い胸にぽつんと咲く小さな蕾へ唇を寄せて、初めは舌先でツンと突き、それから捏ねるようにクニクニと弄くりだす。
「ぁっ、やぁ、そこ・・・ダ、メっ」
 ピクンと反応してしまう体に舌打ちしたい気持ちで、ユーリは必死にコンラッドの髪を引っ張った。
 だが上手く力が入らなくてその指は髪を絡ませるだけに留まる。
「ね、も、コンラッドぉ・・・っ」
「まだこっち、触ってないよ?」
 くすんと苦笑を零したコンラッドは、擦り付けてくる欲心に手を伸ばした。
 あぁ、と吐息を洩らすような声を出し、既に立派に主張しているそれを窮屈そうなズボンの中から取り出す。
 ズボンはそのまま引き摺り下ろし、下着ごとソファーの下へ滑り落とした。
「こんなに涙を零して・・・余程我慢させていたんだね」
 鈴口から零す涙を人差し指と中指に掬い取り、奥まった場所で密やかに息づくそこへ掬い取った雫を滑らせる。
「んんっ」
 ひくりひくりと蠢くそこは、早くして欲しいと誘うように開閉を繰り返した。
 誘われるまま、つぷっと指を差し入れれば内部で蠢く襞が喜んで絡みつき。
「そんなに締め付けなくても、逃げたりしないから」
「そ、なこと・・・言われても・・・、ぁっ」
 くくっと折り曲げられた先には、ユーリにとって最も敏感な場所。
 いつの間に増やされていたのか、二本の指先がすりすりとその敏感な場所を擦った。
「あっ、やぁ、ん、ひぁっ!」
 大きく背を撓らせ、天を頂く操がふるりと震える。
 ぴゅく、と耐え切れずに先走りが零れた。
「も・・・ちょうだ・・・い、・・・ンラぁ・・・ドっ」
 両腕を差し出し、強請るように唇を舐めて。
 細く見開いた漆黒の瞳を潤ませ、ユーリは懇願する。
 濡れた頬に唇を寄せ指を素早く引き抜くと、コンラッドは自らも限界に近い欲望を外気に晒した。
 数回軽く、自らの手で扱き、濡れた先をユーリの蕾へ宛がう。
「息を吐いて、力を抜いていて。」
「ん・・・っ」
 宥めるように頬を撫で額に口付けると、呼吸を合わせて少しずつ埋め込んでいく。
「ふ、ぁっあ・・・っ」
「っ・・・ユー、リ」
「んぁ、あぁっ・・・――!!」
 堪えきれず、残り僅かを性急に突き入れた。
 傷つけてはいまいかと眉を寄せ、コンラッドはきつく瞼を閉じたままの少年を呼ぶ。
「ユーリ、大丈夫?」
「へー、き・・・。動いて・・・」
 漸く呼吸が整ったところでユーリがぎゅっと肩に回した腕に力を込めた。
 汗で濡れた前髪が首の付け根を擽る。
 それに目を細め、己もユーリの髪に頬を埋めて。
「あ――っ!」
 一度ギリギリまで引き抜いたそれを、今度は一気に沈める。
 逃すまいとしていた襞を掻き分け最奥突き上げて、弱い部分を執拗に擦り上げた。
「ぁんっ、やっ、コンラ・・・っ」
「ユーリ・・・っ」
 退いては掻き分けて、擦り上げ押し潰す。
 単調な動きは、けれど強弱を伴うことで与えられる快感も移り変わって。
 遠く、近く、波の様に揺らめく絶頂を次第に引き寄せていく。
「くっ・・・」
 一際強く、コンラッドの腕がユーリの肢体を抱きしめたかと思うと、その大きな掌が互いの腹の間で小さく震えるユーリの欲心を捕らえ、きゅっと扱き上げた。
「やぁあっっ――!」
「っ、――!」
 目の前がスパークして、思考はまっさらに。
 ただ感じるのは互いの乱れた呼吸音と、互いの腹部を濡らす生暖かな液体の感触。
 そして微かな青臭さと大好きな人の清涼な香り。
「ん、ぅ・・・っ」
「大丈夫?」
「・・・だいじょー、ぶ」
 小さく頷き返された答えにほっと安堵の息を吐き、コンラッドは僅かに体を起こした。
「あぁ、随分と出た・・・いたっ」
「そゆことゆーな・・・っっ」
 じとりと睨まれ、コンラッドは「すみません」と悪びれた様子もなく謝罪する。
 それからゆっくりとユーリの中から引き抜き、身支度を感嘆に整え部屋の奥へと姿を消す。
 数分も経たぬうちに戻ってきた彼の手には清潔なタオルが、濡らされてあった。
「はい、体を起こして。」
「ん・・・」
 ほぼコンラッドの腕に抱き起こされたユーリは、そのまま支えられて身を清められる。
 正直なところ余韻でどんなに頑張ってもせいぜい指先を動かすくらいしか出来ないので、されるがままに身を委ねた。
「これでよし、と。・・・まだ余韻が抜けませんか?」
 未だぐったりと寄りかかっているユーリに、悪戯めいた笑みを浮かべてその表情を覗き込んだ。
 すると、緩く瞼を下ろしていただけの瞳を完全に閉じられてしまった。
「この後の予定は、確かギュンターの講義でしたね。体、持ちます?」
「持たない、持つわけない、絶対無理」
 そう反論してぎろりと睨みつけると、背後で肩を竦める気配がした。
「ちゃんと理由をつけて休ませます。俺が悪いんだし」
「その通り!んじゃ、このままコンラッドの部屋に連れてって?」
「仰せのままに」
「えへへっ」
 ぎゅっとしがみ付いてきた温かな体にコンラッドも頬を弛め。
 ゆっくりと、その大切な体を抱き上げた。