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春ののどかな光が、おれの全身を暖かく包む。
中庭の花々も、その陽光に誘われるかのごとく色とりどりの花弁を咲かせていた。
咲き乱れる花々の絨毯から少し離れた、青々と茂る芝生の上におれはごろんと寝転ぶ。
「うーん、いい気持ち」
鼻腔を擽る花の香りも、顔を撫でる穏やかな風も、サイン尽くしで疲労した心身を癒してくれる。
「あー・・・やべ、眠くなってきた」
自然と落ちてくる瞼に抗うことが出来ず、おれはそのまま深い眠りへと落ちていった。
誰かが、おれの髪を撫でている。
指の間を滑り落ちる感触を楽しむかのように、その手は何度も上下に移動した。
「・・・ん・・・」
ごろんと寝返りを打つと、おれの髪を撫でていた人物が微笑んだのが気配で分かった。
見なくともまな裏に浮かぶ柔らかな微笑。
それでも、おれは実物が見たくて、睡魔に負けた瞼をゆっくり持ち上げた。
「・・・あ、起こしちゃいましたか?」
「コンラッド」
ほら、やっぱり。
うっすらと眼を細めて、目の前の彼は笑みを深める。
「おれ、どんくらい寝てた・・・?」
まだちょっと寝ぼけている頭を起こそうと体を動かすと、コンラッドの手にやんわりと押し戻された。
「そんなには。20分くらいかな?ああ、まだ寝てていい。サイン責めで疲れてるでしょう?」
そう言って、コンラッドはまた髪を撫でた。
心地よさにおれも目を伏せる。
「もうちょっとしたら起こしますから、今はゆっくり休んでください」
「ん・・・、あ、でもキャッチボールの時間が」
さっきちらりと目の端に捉えたグローブを思い出し、おれはうぅ、と呻いた。
そんなおれの髪に口付けて。
「眠いときは寝た方がいいですよ。キャッチボールは夜すればいいし」
ね?と返されたら、おれは頷くしかなく。
目の前で覗き込んでいるコンラッドの頬を挟むと引き寄せて、お返しとばかりにキスをした。
僅かに目を瞠らせた彼にしてやったりと細く笑んで。
再び忍び寄る睡魔に目を伏せる。
暫くすると、またコンラッドの手がおれの髪を撫で、次いであやすようにポンポンと腹を叩いた。
暖かな日差しとこの男の手が一際眠気を誘ってくれる。
(幸せだな・・・)
意識が落ちる寸前に、瞼に触れる唇の感触と。
「ユーリ」
おれの名を呼ぶ、大好きな声が聞こえた気がした。
+END+
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