チェリー・キス



「陛下、休憩にしませんか?」
「へーかって言うなぁ〜・・・」
「おやおや、随分とお疲れのようですね」
 苦笑を零して近付いてくる気配に、ユーリは首だけを巡らせる。
 その手には紅茶の入ったポットとカップ、そして小さな果物籠。
 それに「あれ?」と疑問を持って。
「コンラッド、その果物籠の中、何?」
「これですか?」
 くすくすと笑みを零し、コンラッドは離れたテーブルの上にそれらを置いてユーリを手招いた。
 それに釣られるように気だるい体を起こし、ユーリはとてとてと近寄って行く。
 その中身を見て、更に首を傾げる。
「・・・・サクランボ?」
「ああ、向こうではそう言うんだ?眞魔国では"紅玉"と言うんだよ」
「こう・・・ぎょく?」
 紅玉と言うと、サクランボと言うよりリンゴを思い浮かべてしまうのだが。
 そう思いつつユーリは籠の中から茎のついたままのサクランボを一つ摘み取り。

 ぷちん。

「んーっおいひい!」
「それは良かった。さぁ、ちゃんと座って」
「ん。」
 ユーリの背を促し椅子に座らせる。
 ふと、ユーリは何を思ったのかサクランボの茎を口の中に含んだ。
「ユ、ユーリ?!何を・・・っ出して!」
「んー?いいからいいから。・・・ん、んくっ」
「ユーリ?」
 なにやら口の中に茎を含んだまま、ユーリは一心にもぐもぐと口を動かしている。
 取り敢えず飲み込まないことだけは確かなようなので、コンラッドは内心ハラハラしつつもそんなユーリを見守った。


「んんっ・・・・・・だーっ!やっぱ無理っ」
 暫くするとぐったりとテーブルに突っ伏して、ペロッと舌を出した。
 愛らしいその赤い舌の上には、ふやけたサクランボの茎が一本。
 それをコンラッドは指に摘まんで取ると、盆の端に置いた。
「・・・・・・アリガト」
「どういたしまして。・・・で、何をしていたの?」
「いや、サクランボの茎を見るとさ、ついチャレンジしたくなるんだよねー、口の中で結ぶの。」
「結ぶ?」
「そう。舌を器用に使って結ぶんだよ。それが出来る奴はキスが上手いって・・・い、いや、これはどうでもいいんだけどっ」
「へぇ・・・」
 そのときコンラッドの笑顔に黒いものを見た気がしたのだが、気のせいだろうか?
 ユーリは失敗したかな?と内心で思いつつ、そんなコンラッドをちらちらと盗み見る。
 すると。
「あ。・・・ちょっコンラッド?!」
「何事もチャレンジ、でしょ?」
 にこりと笑みを浮かべ、コンラッドは茎を舌の中で転がした。
 そして30秒もしないうちにポトリと掌に落とす。
「はい。」
「げっ、出来てるし・・・」
「上手いからね」
「へ?・・・んんっ」
 すいっと顎を掬い上げられ、抵抗する間もなく唇を塞がれる。
 最初は啄ばむように。
 それから舌で唇の形を辿り、ツン、と舌先で突くと薄っすらと誘うように開かれる。
「ふ・・・んっぁ・・・はぁっ」
 くちくちゅ、と唾液の交じり合う音が聴覚を刺激し、更にユーリの羞恥心を煽った。
 奥に縮こまっているユーリの舌を、コンラッドは半ば強引に絡めとリ吸い上げ、官能を引き立てる。

 ちゅぅぅ。

「んんんっ!」
 最後にちゅっ。と音を立てて唇を離すと、くったりとユーリの体が崩れる。
「ね?」
「・・・・バカ・・・・っ」
「バカだよ。いつだってキスしたいと思ってるからね」
 キスだけじゃない、抱きしめたいし繋がりたいとも思う。
 愛しいからこそ、好きな者だからそこ、その欲求は底が知れない。
 貪欲なまでの欲求にコンラッドは苦笑を零し、キスに酔って瞳をとろんと蕩けさせているユーリを抱き上げる。
「ちょ、コンラ・・・っ」
「ごめん、抑えられそうにない」
 腕の中に囲いながらも口付けを落として。
 ソファの上に降ろしたユーリに覆い被さる。
「いい?」
「・・・・聞くなってば・・・・」
 目尻を朱色に染めながら、ユーリはぼそりと呟く。
 そうして、了承の意を行動で示すように自らコンラッドの首に腕を回し、その首元にすりすりと頬を摺り寄せた。
 すると、コンラッドは蕩けるような満面の笑顔を浮かべ。
「好きだよ、ユーリ」
「ん・・・おれも、好き・・・」
 圧し掛かる重さに陶酔としつつ、ユーリはゆっくりと瞼を下ろした。