05.笑顔



 ふわり、ふわり。
 君が笑う。

 花が綻ぶように。
 綿毛が頬を擽るように。

 ほら、また。

「コンラッドっ」
 両手にたくさんのタンポポを抱えて。
 風を切り、俺のところへとパタパタ駆け寄ってくる。
「見ろよ、こんなにタンポポ咲いてたんだ。これでグレタに花冠作ってやれないかな?」
「これだけあれば十分。お昼過ぎには到着するとギュンターが言っていたから、それまでに頑張って作りましょうか。」
「おうっ!」
 頷いたユーリは、そのままタンポポを抱えたままどっかりとその場に腰を下ろした。
 柔らかな草の上なので俺も何も言わずにユーリの隣へ腰を下ろす。
「これがこうで・・・うぁっ切れた〜」
「あまり力を入れすぎると切れてしまうんですよ。だから優しく扱わないと」
 ちょいちょいと手を動かし、俺は5本ほどを簡単に編みこんだ。
 それを見てユーリが感嘆の声を上げる。
「はぁー、やっぱ器用だよなぁ、あんた」
「そんなことはありませんよ、コツさえ掴めば出来るようになります。さ、ユーリも。」
 ユーリの手を取り、背後から包むように抱きしめて自分の膝の間に抱え込む。
「ほら、これをここに通して、この茎をこっちに」
「これを・・・ここ?」
「そうそう、その調子。力まずに優しく」
 俺はさり気無くユーリの黒髪に口付け、彼の肩に額を持たせかけた。
「これがここ・・・っと。よし!・・・って、コンラッド?」
「ん?ああ、ごめん。重かった?」
「いや、疲れたのかなと思って。ここんとこ忙しかったし・・・」
「大丈夫、あなたといれば疲れなんてどこかに行ってしまうよ。」
「ホント?」
「ホント」
 ぎゅぅっと抱きしめて、その仄かに色づいた頬に自分の頬を擦り寄せる。
 すると擽ったそうにユーリが笑った。
「じゃぁ、はい。コンラッドの分」
「え?」
「手、出して?」
 言われて右手を差し出す。
 だが、ユーリはふるりと首を振ると逆の左手を取ってその薬指に小さな花を縛った。
 そしてえへへ、と。

「婚約指輪・・・・なんてなっ」

 うわーっ恥ずかしい!と頭を抱えてしまったユーリに、暫く呆然としていた俺はゆっくりとその幸せを噛み締めて。
 余っていたタンポポの花を一本、するりと抜き取るとユーリの左手の薬指に、彼がしてくれたのと同じことをした。

「ありがとう、ユーリ」

 そっと、壊れ物を扱うようにユーリを抱きしめる。
 すると、何かに釣られたように顔を上げたユーリは。


 ふうわり。


「っ大好き、コンラッド!」


 ほらこんなにも。
 君の笑顔で、俺は満たされる。




05.10.6